アニサキスとは?加熱・冷凍が大切!

アニサキスは 線虫(寄生虫) の仲間で、成虫はクジラやイルカなどの海生哺乳類の胃に寄生します。人に感染するのはその幼虫で、体長は 2~3cmほどの白い糸状 をしています。
オキアミというプランクトンを食べた魚介類の内臓や筋肉に幼虫が寄生し、それを人が生で食べることで感染します。
症状は軽度の腹痛で済むこともありますが、強烈な腹痛、吐き気、腸閉塞に至る場合もあります。人間の体内では成虫に成長できず、1週間程度で死滅しますが、その間に炎症やアレルギー反応を引き起こすことがあります。
胃アニサキスは内視鏡で取り除くことが可能で、除去すると症状は速やかに改善します。内視鏡で除去できない場合は、鎮痛剤や点滴などで症状を和らげつつ自然死滅を待ちます。なお、現時点で「駆虫薬」による治療は確立されていません。
アニサキスは
- -20℃以下で24時間以上冷凍
- 60℃以上で1分以上加熱
することで死滅します。酢やワサビ、塩漬け、醤油漬けでは死滅しないため注意が必要です。
近年は冷蔵輸送技術が発達し、新鮮な魚を生で食べる機会が増えたため、アニサキス症の報告例も増加傾向にあります。
アニサキス症の症状
初期症状
- 食後数時間以内に急激な腹痛(胃アニサキス症)
- 吐き気・嘔吐
- 下腹部痛(腸アニサキス症は発症まで十数時間~数日)
よくみられる症状
- 強い腹痛(みぞおちのあたり、または下腹部)
- 吐き気・嘔吐
- 下痢
- 腹部の圧痛や緊張
- 微熱(37℃前後)
アニサキス症の種類
胃アニサキス症
摂取から数時間以内に上腹部痛や吐き気が出現。直接の機械的刺激だけでなく、アレルギー反応の関与も考えられています。内視鏡による摘出が有効。
腸アニサキス症
摂取から十数時間~数日後に下腹部痛、嘔吐、発熱。まれに腸閉塞を起こすことがあり、入院が必要になる場合もあります。
アニサキスアレルギー
幼虫そのものや抗原に対する免疫反応で蕁麻疹、呼吸困難、アナフィラキシーショックを起こすことがあります。特に日本では 食物・薬剤に次いで3番目に多いアナフィラキシー原因 とされています。青魚アレルギーと誤解されているケースも少なくありません。
アニサキスがみつかりやすい魚介類
- サバ(特にしめ鯖)
- イワシ
- サケ(生やルイベなど)
- イカ
- サンマ
- タラ
- ホッケ
- ホタルイカ
※これ以外の魚介類にも寄生する可能性があります。
アニサキスの検査と診断
魚介類を食べた後に、急な強い腹痛や吐き気が出た場合は、アニサキス症の可能性があります。
当院ではまず問診で、食べたものや症状が出たタイミングを確認します。
主な検査方法

胃カメラ検査(内視鏡検査)
アニサキス症の診断と治療の中心となる検査です。胃の中にいるアニサキスを直接確認でき、見つけ次第その場で摘出できます。
超音波検査(腹部エコー)
腸の中に炎症や閉塞(イレウス)がないかを調べるのに役立ちます。
血液検査
炎症反応やアレルギー反応の有無を確認します。
レントゲン検査
腸アニサキス症が疑われる場合に行うことがあります。
胃にいる場合は内視鏡で診断・治療が同時に可能ですが、腸に移動している場合は特定が難しいケースもあります。その際には症状や検査結果を総合的に判断します。
アニサキスの治療
内視鏡での摘出
胃カメラでアニサキスを確認できれば、その場で取り除きます。摘出すると症状は改善します。
薬による治療(対症療法)
内視鏡で取り除けない場合は、痛み止めや胃薬を使って症状を緩和します。アニサキスは人の体内で長く生きられず、通常は1週間以内に死滅します。
入院治療が必要な場合
腸閉塞に至った場合は、入院が必要になります。
アニサキスの自然経過
アニサキスは人の体内で長期間生存できず、通常1週間以内に死滅します。ただしその間に炎症やアレルギー症状が続くため、自然に治るのを待つよりも内視鏡での摘出が望ましい です。