大腸ポリープとは
大腸ポリープとは、大腸粘膜が盛り上がったできもののことを指し、多くの場合は痛みなどの自覚症状を伴いません。ただし、大きくなると少量の出血を起こし、その結果、便潜血検査が陽性になることがあります。
大腸ポリープと大腸がん
大腸ポリープの約80%は「腺腫(adenoma)」と呼ばれる腫瘍性ポリープであり、これは大腸がんの前がん病変とされています。多くの大腸がんは、この腺腫が徐々にがん化していくこと(adenoma-carcinoma sequence)によって発生することが知られており、腺腫は原則として切除の対象となります。
アメリカでは内視鏡による大腸がん検診が普及しており、腺腫を早期に発見・切除することで、大腸がんによる死亡数の減少に成功しています。
一方で、肛門に近い直腸に見られる小さな「過形成性ポリープ(hyperplastic polyp)」は、がん化のリスクが極めて低いため、通常は切除の対象となりません。
近年では、「鋸歯状病変(sessile serrated lesion, SSL)」の悪性化リスクが注目されています。ある研究(Phipps AIら, Gastroenterology, 2015)では、大腸がんの約20%がSSLを起源としていると報告されており、SSLも切除対象とされています。
SSLは、大腸の正常粘膜とよく似た色調で、平坦な形状をしていることが多く、発見が難しい病変です。また、その広がりを内視鏡で正確に診断することが困難であるため、不完全切除となるリスクも高いとされています(Pohl Hら, Gastroenterology, 2013)。
当院院長は、大阪国際がんセンターや大阪大学をはじめとする複数施設と共同で前向き研究を行い、10mm以上のSSLに対する内視鏡治療後の再発率が3.1%であったことを報告しています(Shichijoら, J Gastroenterol Hepatol, 2022)。
当院では、大腸ポリープ切除実績が10,000例以上の院長が、正確な治療前診断と高精度な内視鏡切除を行い、再発防止に努めています。
大腸ポリープ切除(日帰り手術)について
大腸ポリープには、がんになるリスクがほとんどない良性のもの(非腫瘍性ポリープ)と、将来的にがんに進行する可能性のあるもの(腫瘍性ポリープ)があります。良性のポリープは、経過観察とすることが多いですが、がんのリスクがあるポリープは、内視鏡での切除が必要になります。
当院では、大腸カメラ(内視鏡)検査において、大腸全体を丁寧に観察し、なるべく苦痛の少ない検査を心がけています。検査中にポリープが見つかった場合は、その場で日帰り手術として切除することが可能です。検査と同時にポリープも取り除きたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
当院の院長は、これまでに10,000個以上の大腸ポリープを切除してきた実績があり、他の医療機関では切除が難しかった症例や、十分に切除されずに再発したポリープ・がんの治療経験も豊富です。内視鏡で届く範囲のポリープであれば、基本的にはその場で切除が可能です。ただし、大きさが20mmを超えるものや、体調・ご希望によっては、入院治療が望ましいケースもあります。そのような場合には、大阪国際がんセンターなどの専門医療機関と連携して、スムーズにご紹介いたしますので、どうぞご安心ください。
内視鏡的大腸ポリープ切除術(ポリペクトミー)
内視鏡の先端から「スネア」と呼ばれるワイヤーを出し、ポリープの根元を締めつけて電流(高周波)を流しながら切除する方法です。かつては主流でしたが、出血や腸に穴が開く(穿孔)などの合併症リスクがあるため、当院では現在この方法はほとんど行っていません。
コールドポリペクトミー
現在、世界的にも広く行われているポリープ切除法です(Takeuchi, Shichijoら, Dig Endosc, 2022)。
スネアでポリープを締めつけて切除しますが、高周波電流を使わないため、熱によるダメージがなく、体への負担が少ないのが特徴です。対象となるのは10mm以下の良性ポリープです。多少の出血が起こることはありますが、すぐに止血でき、安全性の高い治療です。
また、当院の院長はこの手法に関する複数の研究に関わっており、コールドスネアポリペクトミーでは粘膜の浅い部分までしか切除できないことから、「がんの可能性があるポリープには不向き」であることも報告しています(Shichijo, Takeuchiら, J Gastroenterol Hepatol, 2020)。そのため、切除前の正確な内視鏡診断がとても重要です。当院では、最新鋭の拡大内視鏡を用いてがんの有無をしっかりと見極め、最適な治療法を選んでいます。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
ポリープの下に生理食塩水を注入して浮かせ、その根元をスネアで切除する方法です。平坦な形をしたポリープや、がんの疑いがあるポリープ、少し大きめの病変に用います。
さらに進化した方法として「Underwater EMR」があります。これは腸内に水を注ぎ、水中でポリープを切除する手法で、従来よりも確実に切除できると報告されています。
実際に、大阪国際がんセンターを中心とした研究では、10~20mmのポリープに対して治癒切除率が高かったことが証明されており(Yamashina, Uedoら, Gastroenterol, 2019)、院長の留学先であるドイツ・アウグスブルク大学でも20~40mmのポリープに対して同様の結果が出ていますNagl Sら, Gastroenterol 2021)。
院長自身も、従来では難しかったポリープの治療におけるUnderwater EMRの有用性を報告しています(Shichijoら, Video GIE, 2020)。
当院では水を注入できる専用の内視鏡を使用することで、コールドスネアーポリペクトミーとUnderwater EMRの2つを、大腸ポリープの主要な治療法として採用しています。どちらの方法も、患者様の体への負担が少なく、安全性と確実性を兼ね備えた最新の治療法です。
大腸ポリープ切除後の過ごし方
(何日安静にするべきか/注意点のまとめ)
大腸ポリープ切除後は、出血などの合併症を防ぐために、術後数日〜1週間程度は安静にお過ごしください。
制限の内容や期間はポリープの大きさや切除方法、患者様の病状によって異なりますので、医師の指示に従ってお過ごしください。
飲食
- 術後は腸に負担のかかる食事や飲酒は控えてください。
- 繊維質の多い野菜は、患部への刺激となり出血の原因になります。摂りすぎにはご注意ください。
- 香辛料、脂っこい食事、アルコール類も避けてください。
- 便秘も腸に負担をかけるため、必要に応じて緩下剤(便をやわらかくするお薬)を処方いたします。
運動
- ジョギング、テニス、ゴルフなどの激しい運動は術後3日〜1週間は控えてください。
- 運動により腹圧がかかると、出血を引き起こすリスクが高まります。
- 軽い日常生活は問題ありませんが、無理は禁物です。
入浴
- 長風呂やサウナは避けてください。血圧上昇により出血のリスクが高まります。
- 術後数日はシャワー浴程度で済ませていただくことをおすすめします。
お薬(抗血栓薬を服用中の方)
- 検査のために休薬された方は、通常翌日から再開可能です。
- ただし、症例によっては再開を1週間程度遅らせる場合もあります。
- 検査終了後に、医師からご説明と必要なご指示をさせていただきます。
出張・旅行
- 術後1週間は、出張や旅行などの遠方への移動を控えてください。
- 出血などの合併症が起きた際、すぐに対応できない場合があります。
術後の出血
- 術後1週間ほどは、排便時に便の状態をご確認ください。
- 便に少量の血液がつく程度であれば心配ありません。
ポリープ切除時には少量の出血を伴うことがよくあります。その血液が排便時に流れてきて便に付着することがありますが、少量であれば心配はありません。 - しかし、多量の出血(便器が真っ赤に染まるなど)がある場合は、すぐに当院までご連絡ください。
その場合は再度大腸カメラ検査を行い、出血部位を確認・止血処置を行うことがあります。必要に応じて入院可能な連携医療機関へのご紹介も行っております
大腸ポリープ切除の費用
1割負担 | 3割負担 | |
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大腸カメラ検査のみ | 約2,500円 | 約7,500円 |
大腸カメラ検査+組織採取(生検) | 約3,000~7,000円 | 約10,000~18,000円 |
日帰り大腸ポリープ切除 | 約9,000~12,000円 | 約27,000~36,000円 |
診療費用は厚生労働省が定める診療報酬に基づいており、同一の診療行為にかかる費用は全国一律です(2025年現在)