吐き気・嘔吐の原因
吐き気(悪心)は「吐きたい」と感じる不快感で、嘔吐は実際に胃の内容物を吐き出すことを指します。
一時的な体調不良でも起こりますが、繰り返したり強い症状が続く場合は、消化器や脳、心臓など全身の病気のサインの可能性があります。
原因は大きく分けると、疾患によるものとそうでないもの(日常生活や一時的な影響)があります。
消化器に原因があって吐き気が起こる病気
急性胃炎・慢性胃炎
みぞおちが痛む、胃の不快感や胸やけ、吐き気が出る病気です。アルコールや刺激物、ストレス、薬(特に鎮痛薬)などが原因で起こります。炎症が長引くと胃粘膜の回復力が低下し、胃潰瘍に進展することもあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
みぞおちの痛みが特徴的ですが、自覚症状が乏しいまま進行することもあります。食後に悪化する場合は胃潰瘍、空腹時に痛む場合は十二指腸潰瘍の可能性があります。診断には胃カメラ検査が欠かせません。
胃がん
進行すると腹痛や吐き気が出ることがありますが、初期は無症状であることも多い病気です。胃カメラ検査によって早期に発見すれば、日常生活に大きな影響を残さずに治療できる可能性が高まります。発症にはピロリ菌感染が関与しているとされ、40歳を超えたら一度は胃カメラ検査を受けることを推奨します。
逆流性食道炎
胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、胸やけや吐き気を生じます。胃は強酸性の胃酸から粘液で守られていますが、食道にはその防御機能がないため炎症が起こります。薬で改善が期待できますが、再発しやすいため生活習慣の見直しも重要です。
感染性腸炎(出血性大腸炎/食中毒)
ウイルスや細菌、寄生虫によって感染し、発熱・下痢・嘔吐・腹痛・血便などが起こります。多くは自然に回復しますが、場合によっては入院や点滴が必要です。市販の下痢止めは逆効果になることがあるため、自己判断せず消化器内科を受診してください。
腸閉塞
強い吐き気・嘔吐とともに排便や排ガスが止まるのが特徴です。大腸がんや手術後の癒着、腸重積などが原因で起こります。治療には入院が必要で、絶食して腸を休めたり、鼻から管を挿入してガスや内容物を排出したりします。場合によっては手術が必要になることもあります。
虫垂炎(盲腸)
右下腹部の痛みと吐き気を伴うことが多いですが、症状の現れ方には個人差があります。抗生物質で治ることも多くなっていますが、手術で切除する必要があることもあります。
腹膜炎
胃潰瘍や十二指腸潰瘍が穿孔した場合や膵炎などで腹膜に炎症が起こると、激しい腹痛と嘔吐が見られます。重症化すると命に関わるため、早急な治療が必要です。
急性膵炎・慢性膵炎
急性膵炎では突然の激しい上腹部痛と嘔吐が特徴です。胆石や過度な飲酒が主な原因です。重症例では多臓器不全に至ることもあります。慢性膵炎は炎症が長期間持続する病気で、糖尿病や消化吸収不良につながるため注意が必要です。
急性肝炎
食欲不振、倦怠感、黄疸、吐き気が特徴的です。B型・C型肝炎などウイルス性がよく知られていますが、薬剤性や自己免疫性のこともあります。基本は安静で自然に回復することが多いですが、まれに劇症化することがあります。
胆石症・胆のう炎・胆管炎
胆石が胆のうや胆管に詰まることで、右上腹部の激しい痛みや吐き気、発熱、黄疸が起こります。胆のう炎や胆管炎を伴うことも多く、抗生物質で改善する場合もありますが、内視鏡治療が必要な場合や、根治には手術が必要になることもあります。
消化器以外が原因で吐き気が起こる病気
尿路結石
背中や腰に突然の激痛が起こり、吐き気を伴います。小さい結石は水分補給や薬で自然排出が期待できますが、大きい結石は砕石術や手術が必要です。
治療後は再発防止のために、結石が生じづらい食事などを意識することが重要です。
クモ膜下出血
突然の激しい頭痛と嘔吐を伴う病気で、脳動脈瘤の破裂によって起こります。命に関わるため、直ちに救急搬送が必要です。
緑内障発作
眼圧が急激に上がることで頭痛や吐き気を伴います。放置すると失明に至ることもあり、早めの眼科受診が必要です。
脳腫瘍
頭痛や視覚異常、吐き気が起こることがあります。腫瘍が脳を圧迫することで症状が出ます。
片頭痛
ズキズキするような強烈な頭痛と吐き気が特徴です。悪化すると日常生活に支障をきたすため、適切な薬で発作をコントロールすることが大切です。お悩みの方はご相談ください。
脳出血
吐き気・嘔吐の他、めまいの症状をきたします。特に小脳で出血が起こると、めまいと吐き気が強く現れます。緊急治療が必要です。
脳震盪
スポーツや事故で頭を打つと、吐き気・嘔吐・めまいが現れることがあります。安静が必要です。
髄膜炎
発熱、頭痛、吐き気、痙攣などが起こり、急速に重症化することがあります。命に関わるため早急な治療が必要です。
心筋梗塞
胸痛に加えて吐き気・嘔吐を伴う場合があります。生命に関わるため救急要請が必要です。
糖尿病性ケトアシドーシス
糖尿病が悪化すると血液が酸性に傾き、吐き気や意識障害をきたすことがあります。緊急治療が必要です。
メニエール病
めまいや耳鳴り、難聴とともに吐き気が起こります。耳の平衡感覚の異常が原因であり、耳鼻咽喉科での治療が必要です。
病気以外が原因となって吐き気が起こるもの
- 妊娠によるつわり
- 薬の副作用(抗がん剤、抗生物質、鎮痛薬など)
- 乗り物酔い
- 強いストレスや精神的要因
大人が嘔吐する原因
大人が嘔吐する原因にはさまざまなものがあります。
一時的な体調不良や日常生活の影響で起こることもあれば、消化器や脳の病気、妊娠、薬の副作用などが背景にあることもあります。
日常生活における原因
- 暴飲暴食、脂っこい食事
- 過度の飲酒
- 乗り物酔い
- 強いストレスや不安
消化器などの病気による嘔吐
- 胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 胃がん、大腸がん
- 感染性胃腸炎(食中毒)
- 腸閉塞、虫垂炎
- 胆石症、膵炎、肝炎
- 脳や神経の病気による嘔吐
- 片頭痛
- 脳腫瘍、脳出血、脳震盪
- クモ膜下出血
- 髄膜炎
- メニエール病(平衡感覚の異常による嘔吐)
妊娠による嘔吐
- 妊娠初期に見られる「つわり」
- 多くは一過性ですが、重度の場合は「妊娠悪阻」と呼ばれ、点滴治療が必要になることもあります。
薬の副作用による嘔吐
- 抗がん剤、抗生物質、鎮痛薬など
- 薬を開始してから症状が出た場合は、必ず医師にご相談ください。
受診をおすすめするケース
- 嘔吐が繰り返し起こる、または長く続く場合
- 吐物に血が混じる、黒色の吐物が出る場合
- 強い頭痛や胸痛、意識障害を伴う場合
- 水分が取れず脱水症状(ふらつき・尿が出ない)がある場合
このような場合は、重大な病気が隠れている可能性があるため、早めの受診が必要です。
大人の嘔吐は一時的な原因によることもありますが、消化器疾患や脳疾患などの重大な病気のサインであることも少なくありません。
「たかが嘔吐」と軽視せず、症状が続いたり繰り返したりする場合は、大阪市鶴見区の当院までお気軽にご相談ください。
吐き気・嘔吐のメカニズム
吐き気や嘔吐は、体が「何か異常が起こっている」ときに働く 防御反応 です。
単なる消化不良のときにも起こりますが、脳や全身の病気によることもあります。
吐き気が起こる仕組み
- 胃や腸が刺激を受けると、その情報が神経を通じて脳へ送られます。
- 脳の「嘔吐中枢」(延髄という部位にある神経の集まり)が刺激されると、吐き気として感じられます。
- 吐き気の段階ではまだ胃の内容物は出ませんが、「吐きたい」という感覚やムカムカ感、食欲不振、冷や汗、めまいなどを伴うことがあります。
嘔吐が起こる仕組み
- 嘔吐中枢がさらに強く刺激されると、胃の筋肉が収縮し、腹部の筋肉や横隔膜も連動して動きます。
- その結果、胃の内容物が食道を通って口から吐き出されます。
- 嘔吐は、体にとって有害なもの(食中毒菌や毒素、余分な胃酸など)を排出するための 生理的な防御反応 として働きます。
吐き気・嘔吐を引き起こす刺激の種類
- 消化管からの刺激:胃炎・潰瘍・腸閉塞・食中毒など
- 血液を介する刺激:アルコール、薬剤(抗がん剤など)、ホルモン異常
- 神経系からの刺激:片頭痛、脳腫瘍、脳出血、メニエール病、乗り物酔い
- 精神的な要因:強い不安やストレス
吐き気・嘔吐は
大阪市鶴見区の当院へ
吐き気や嘔吐は一時的な体調不良で起こることもありますが、消化器・脳・心臓など命に関わる病気のサインである場合も少なくありません。
吐き気を解消するためには、原因に応じた治療をすぐに行うことが望まれます。そのために当院では、詳細な問診を重視しています。食事などの生活習慣、内服中のお薬、既往歴などを伺い、必要に応じて胃カメラ検査・腹部エコー・血液検査などを行います。
病気が原因の場合には、原因疾患に応じた治療を行うことで、吐き気や嘔吐の症状を改善し、日常生活への影響を最小限に抑えることを目指します。また、精神的ストレスが要因となることもあるため、ストレスと上手に付き合う方法や適度な解消法を見つけることも重要です。
さらに、手術や高度な治療が必要な場合には、提携している専門医療機関へご紹介いたします。安心してご相談ください。